ブルーズ・バンドをやろうぜ!その3







ブルーズ・バンドをやろうぜ!その3

1986年、菩南座が10周年を迎えようとしていた。?

遊びにやってくるお客さんのバンドの数も増えてきて、いつもライブの話で盛り上がっていた。

しかし大和、鶴間にはライブをやる会場ないので、この辺のバンドは東京か横浜でスケジュールを決めて活動しているようだった。

そんなこともあり、ちょっとした思い付きで、オイラは10周年のライブ・バンド・パーティをやってみたいと思った。

一人では荷が重いので「CAT」の長洲辰三に話を持ちかけ、「ウイスキー・リバー」の中尾淳一も加わり、実行委員会が出来上がったのだ。

? まず会場の問題だ。以前にも利用したことがある、鶴間駅よりR246通り沿いの「高下ビル2F」の空きビルに決定した。

ここは以前にも使っているお馴染みの空きビルで、すなわち「CAT」の2Fになる。

数年前にキャバレー「ロンドン」が営業していたところで、ガランとした何もない店内は80坪以上はあったであろう。

駅前の一等地のビルに何年も借り手がないのは、こちらにとっては幸わいした。

パーティの日取りは3月30日(日曜日)と決まり、準備に取り掛かった。?

  各バーに遊びに来るバンドの中から、各店の推薦バンドや、出たがりバンドを決め、少しづつ盛り上がり始めてくるのが解るようになった。

出演バンドがほとんど出揃えば音響や照明の機材の手配をしたりして、それぞれが動いた。

手作りのポスターも出来上がった。

そしてバンドの連中は本番に向かって練習をしている話が入ってくる。  誰々のバンドは何を演奏するのか?

あのバンドは良いとか、うまいとか、面白い、うるさい、なんて勝手なことを酒の肴にして、

何時にもなく話題がはずむ真夜中の鶴間のバーであった。??

  ある日の打ち合わせの時、「うるさいバンドはまとめて前座にしょう」 なんて事になった。

長洲辰三が言い出した。(うるさいバンド、すなわちエレキバンドの事である)  そうなのだ、このビルには防音装置はない。

薄い壁と窓ガラスだけの空室なのだ。  階下はスナックが6軒も営業しているので、苦情はまぬがれないだろう。

おまけに隣は駐車場をはさんで、店が連なっている。  目の前には交番があり、やっかいなことはしたくないのは当然である。

エレキバンドは明るい内にやってしまおう、なんて言っていたが、結局は夕方の4時にオープン、5時スタートに落ち着いた。

少しは暗くなってくれないと盛り上がらない。  何といってもお客様は100%の深夜族の集団みたいなものでしたから。

 ?  会場は3日間借りることになった。

電気がきていないので前日の昼間に電気配線と照明の準備することになり、ボランテァの電気屋さんと作業の手配もした。

3月なので冷暖房の必要は、まずいらない。?  酒屋には大きな冷蔵庫といっしょに酒類の注文もすませれば、パーティーの日が近付いて来た

すでに出演バンドは締め切っていたが、急遽、厚木、座間、上瀬谷の米兵のロックバンドが参加することになり、

アルコール類の持込をフリーにしたので、大酒呑みにも間に合う程度の仕入れの段取りが付けられた。

前売り1500円、当日1800円のチケットは200枚作ったが、当日近くになると、残りは10枚足らずだった。

舞台進行と司会は長洲辰三が受け持ち、バー関係は中尾淳一と同店のバーテン(通称デカオちゃん)にやってもらうことになった。

オイラはチケットのモギリと場内警備係をやることになり、いよいよパーティの日がやってきました。?

  前日に用意していた電気を流して、何もないビルの中に機材が持ち込まれ、3分の2を客席に使い、

あとの残りのスペースを楽屋と楽器置き場に使ったが、広さは申し分ない程のおおきさだ。

心配そうに様子を伺いにきたビルのオーナーが、裸電球だけの淋しいステージを眺めて、まん幕を貸してくれるといってきた。

「黒いまん幕も、赤いまん幕あるぞ!」だって。  お葬式の集会じゃあるまいしと辰三と二人で大笑いでした。

大和の質屋「江戸や」のマーちゃんが、質流れ品の、キラキラのクリスマス用の電球でステージを飾って、何とか格好はついてきた。?? 

時間のたつのは早いもので、上天気に恵まれた会場ではビールを運び込んで冷やしたり、音出しの調整をしていたら、

オープンの時はすでに過ぎ、スタート時には続々とお客さんが階段を上がってくる。

缶ビールや、その他の飲み物はすべて200円均一にしたからバーのコーナーは大忙しの状態になり、

ビールを買い占める奴まで出てくる始末である。  そしていよいよ本番スタートした。

最初のハード・ロック・バンドの演奏が始まれば、ギターの響きで米兵は立ち上がり、踊りはじめる。

?  いつもコラム読んでくれている、懐かしい「菩南座」ファンの為に、その日出演したバンド名を記しておきたい。

?「Woman in Red」

「The Jezass」

「Marshi」

「M.M.B.Ahowada Band」

「Dave Steeken&Cooking Stove」

「Back Street Rockn’Roll Band」

「Moon Child」

「Snaffkin Br」

「Sukezou+Makoto Aihara」

「Fandango」

南正人

「橋詰 Mooney宜秋+善兵衛」

日倉士歳朗

「ケニー井上」 「内海利勝長洲辰三

?この他にも、大勢のミュージシャンが駆けつけてくれました。

??  チケットは完売になり、尚も押し寄せるお客様!2時間程で、酒類がすべてなくなった。

まだライブは半分終わった位だ。呑みたい人達は酒屋の自販機にすっ飛んでゆく。

バーでは小銭の両替も忙しく、警備のオイラは場外に出る人にスタンプをペタペタ・・・。? 

そうこうしているうちに、とうとう苦情がきた。階下の店舗のスナックの御主人がドタバタ騒ぎで商売ができない!

 酷い事にはトイレが間に合わず屋上から小便をしている奴!呑みすぎで倒れている奴!等など、

オイラは謝りに行ったり、屋上にバリケードを造ったり、大忙し。?

  エレキバンドが終わり、静かなアコーステックの演奏タイムに入ると、物陰でお姉ちゃんとチューチューして居る米兵やら、

余りの熱気で裸になりビールを頭にかけている勿体ない奴のオン・パレード。

終了時間は10時頃を目安にしていたが、これではなかなか終わりそうにもない。

スピードを上げて最後を盛り上げて終わろうと、長洲辰三のとぼけた司会で、「さあ、もう終わりだよ 帰って 帰って!」

と言ってはみるが、上機嫌で持ったグラスが手を放れることはない・・・・・

付近の三軒ある酒屋さんの自販機は、全部売り切れの赤いランプがついたと言っていた。?? 

呑み足らない若者達は肩を組みながら、階段から転げ落ちそうになりながら、何処かへ消えて行く。

ハード・ロック・バンドから始まり、ブルーズ・バンドにレゲエ、フォークと盛り沢山のライブは10時半頃に無事終了した。

場内は大変なゴミの山になっていたが、それよりは酔っ払って撃沈している奴をたたき起こして、外に追い出す方が先だ。

今まで威勢よく騒いでいた連中は何処へ行ったのか、人っ子ひとりいなくなった場内をひとり見渡せば、

何だか急に静かになって、寂しい気分になってくる。

何時ものように代わり映えのない飲み屋街からは、酔っ払いのカラオケが聞こえてくる・・・・・?

  今回のライブでは、バンドを含めて延べ400人以上は入ったであろう、まずは大成功であった。






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