裏切りの街 その2 なぜか《浅草》



真面目に務め上げていましたが、第一回の公判には両親は出廷せず

再び山奥へ逆送されました、同房の奴らは言ってました

少年犯罪の場合は親がOKしない限り、娑婆に出ることは不可能な事らしい

そんな訳で未だに娑婆に出られない大先輩が何人かいました

そして悪玉の夜間教育(囚われている先輩)が始まるのだ

どうしたら察に挙げられず、賢く立ち回るのか 極道の世界をミッチリ教えてくれるのだ

本人だってまだまだ十代の餓鬼のくせにして まぁ よく知っていますこと

年少にも毎週のように新入りがやってきます

その連中にも当然、ゴロツキ社会の仕組みを教え込んだりしているから

娑婆に出る頃には いっぱしのオア兄さんに成っています

しかし又 懲りもずに一ヶ月もしない内に またここに戻って来る奴もいました

よほど気に入ってっても好んで戻って来るわけがないだろう 再犯を繰り返せば

いずれは少年院 それとも地の果て少年刑務所か そして年齢制限で刑務所送り

再犯をつづけていれば いずれは懲役太郎の世界になって行く事になるのです

  二度と犯罪には手を染めません なんて言っていましたが社会のルールに馴染むまでが苦労なのだ



半月がたち やっとパイ(仮釈放)になりました

娑婆に出て まず旨い飯屋へ行く事は言うまでもない

  行き付けの処は顔は出さないようにと(保護司)支持があったが

古巣を歩けば誰か顔見知りの人間に出会うものです そして

  いつまでもフーテン(プー太郎)を している訳にはゆかない

まず仕事を決めねば なんとなく浅草橋の問屋街で住み込みで働く事になる

得意の絵筆で、学童鞄に絵を描く単純な流れ作業員の一人になりました

『浅草には俺の女が居るから伝えてくれ』なんて入所中の土地者に頼まれましたが

しかし 働いている工房は月に二回の休み おまけに毎晩のような残業作業です

  散歩も 買い物も 風呂や以外に外出する時間はほとんどないのだ 疲れます!

おまけに未成年と言う事で酒もタバコも禁止なのだよ

夜遊びタイムがないからまるで房での 単純作業をしているみたい

  自由時間は飯を食うのと 便所タイムがバカみたいにうれしい



そんな事情があり 浅草の人の事は もう忘れていました

伝書鳩(出所した連絡員)として役目は果たせず数ヶ月がたち ある日

久々の休日に雷門を歩いているときの事 後ろから声をかける男がいました 

   振り向くとビシッと背広を着た背の高いお兄さん!そう 浅草の先輩と鉢合わせ それとお身内の人 

これには吃驚です まさか 世間は狭すぎです いつになったら出られるのだと なげいていた男

その男 浅草の先輩が 目の前にニヤニヤ笑って立っていたのです 近くのサテンへ入り話を聞くと

いろんな事があったそうですが 兎に角数ヶ月かかつて出てきたそうです

来年は二十歳になるので ここらで一旗挙げるのだと息巻いていました

娑婆にいるのが嬉しいせいか その晩は二人で飲みに行きました 久し振りの酒に泥酔しました

その後 浅草(ROX)六区の周辺で見かけた事がありましたが 仕事を辞めてから行くことも減り

  現在は知る人も居ません










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